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2007年7月

2007.07.23

博物館学 照明実習

芸大の夏季集中講座の授業を行ってきました。

学芸員の資格を取るためには、必要な授業です。
卒展の時などに、学生と光の話をしながら、照明のセッティング等をすることは有りましたが、準備をして、座学と実習を一日がかりで行うのは初めてです。

これから美術館などに携わる学生や、作家活動をする学生達に、あかりの話をする機会を与えていただき、大変有意義な時間を過すことが出来ました。

日本の明かりに関する文化はまだまだ未成熟で、知識が無いこともその一因と考えております。
光による快適な環境の構築には、あかりのプロに有償で仕事を依頼する事の価値は、まだまだ理解されていません。
照明デザインが職能として認知され、優秀な人材がこの業界に入ることによって私達のあかりの文化は発展すると考えます。

ですから私たちは、若い将来性の有る学生達に、光を上手に制御することによって、素敵な景色が手に入ることに気がついてもらいたいと思います。
そのための努力を私たちはしていかないと業界の将来は無いと考えます、
私達の出来ることは小さな一歩ですがその場を与えてくれた東京芸術大学大学美術館に感謝致します。

午前中の座学の様子です
寺子屋風で素敵な環境でした
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午後からは実際の照明器具を使ってのライティング実習。
初めて脚立に乗る子も多く、
おっかなびっくりだけど、皆一生懸命頑張っていました。
光を楽しんでもらえれば幸いです

午後の風景

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2007.07.07

金刀比羅宮 書院の美

2007.7.7〜9.9 東京藝術大学大学美術館 「金刀比羅宮 書院の美」

金毘羅さまの書院の襖をレイアウトのままに再現、応挙や若冲、岸岱の作品を見る事が出来ます。
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部屋を再現するために、通常の天井からのライティングだけでは、物理的な制約が多く、また作品保護のためのアクリルのカバーによる光の反射や写り込みををいかに少なくするかが問題でした。
また実際の書院の雰囲気をいかに美術館の空間で再現するかもライティングのテーマとなりました。
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本来の襖は畳に座った状態で見る事を前提に書かれていますので、今回は制約のない表書院で、襖を高く配置して座った目線で観賞できるように工夫しております。またあかりも行灯などの低い位置の光源で見せるほうが本来の見え方に近づきますので、床からスポットでライティングをする手法を選択致しました(天井からのライティングによる影等も避けたかったので)

床からのライティングでは会場の制約で襖よりかなり近い距離から光を当て込まなくてはならず、器具に近いところの照度が高くなりすぎるためレンズによる配光の変更と個別調光の機能が絶対条件になりました。

器具選定にあたりドイツERCO社の器具が実験の結果もっとも適切な配光を得ることが出来ましたが、コストバランス等で国産の器具の中から選ぶことになり、国産各社の協力で実験を行い、最終的に松下電工の器具を選定することになりました。
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選定した器具の配光に合わせて襖の高さを決定し、アクリの写り込みと、作品への光がもっともバランスの良い位置を決定しました。

作品の多くは金箔を貼り微妙な光の変化で見え方が変ります。
もちろん天井からの光と床からの光では全く異なった見え方になり、実験の結果、上下両方からの光で作品を見せることにしました。

個人的には実際の芸大美術館の明るさの70%位の明るさの時がもっともしっとりと金箔が美しく見える明るさでしたが、展示主旨がしっかりとお客様に作品を見ていただきたいとの事でした(光が強いとかなり白っぽくなってしまう)
作品を細かく見ることが出来ると言う意味では見やすい展示だと思います。

展示空間全体の光は、天井が白く高いために、表書院の展示では光がかなり回り込み、本来のしっとりとした空間より光が満ちた状態になってしまいましたが、逆にスッキリとした空間になり、表書院の見え方としては奥書院と対照的で結果的に良かったと思います。
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奥書院が内装的にもしっかりと作り込み、実際の雰囲気に近く、本来は下方向からの光だけでライティングをしたかったのですが、会場の天井の高さが低く作品を高く設置できなかった為に床置き照明は中止し、天井からのライティングとなりました。
部屋が小さいために床に器具が有るとかなり照明器具が目立ってしまうために、結果的にはスッキリと見せることが出来て良かったと思います。

色々な制約のなかでの照明計画となりましたが、十分な準備と検証をした為に与えられた条件の中では満足できる空間を作れたと思います。

照明検証に協力していただいた各社に感謝致します。
エルコライティング
松下電工
ウシオスペックス
大光電気
遠藤照明
マックスレイ

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